Birthday


1話:コイビトの定義







生まれて初めて,人をスキになった。

スキになった人は,男の人だった。 同性だった。










婚約者がいる,らしい。 だけどスキになってしまった。
イザークに相談をしたら,答えはなんとなく分かっていたけれど,阿呆かと言われた。
分かっていた,というより,そんな答えが返ってきて当たり前だ。
けれど,イザークは予想外の答えをくれた。



「               」



イザークが知り合いだというから,紹介をして貰って,携帯で連絡をとっていると喫茶店で会うことになった。

緊張する。
心臓がどきどきなっている。
こんな,いい年した大人が何をやっているんだろう,と思ったけれど,見ないフリをした。

「こんにちわ,アスラン・ザラです」
そして,爽やかな青年は現れた。 人の良さそうな笑みを浮かべて。
「あ,えっと,こんにちわ,キラ・ヤマトです」
少し声が震えてしまった。
やっぱり緊張しているらしい。

それから他愛もない話をして,そして笑った。
笑う顔が,誰よりも素敵に見えて仕方がない。 婚約者が羨ましい,なんて思ってしまった。
同性,なのに。 結婚なんて出来るはずがないのに。

それから,喫茶店を出てから,僕とアスランは近場の人口で作られた海へと向かった。

作られた,と言われているけれど,いつかに見たTVの本物とそっくりに見えて仕方がない。
「本物の海,みたいだな」
どうやら,アスランも同じことを考えていたらしい。
「僕も思った,それ」
互いの口からくすくすと笑いが漏れた。

潮の匂いを連れた風が僕とアスランの間を通っていく。
日差しは暖かく,穏やかな空気が包んでくれているようだと思う。

「地球に降りたら,本物の海が見れるんだよね? 一度だけ,見てみたいな・・・・」
「そういう物は大切な人と行かないと」
大切な人・・・・・・。そんなモノは,僕に無いよ・・・・
その言葉を飲み込んで,僕はアスランに訪ねた。
「アスランには大切な人はいる?」
どんな言葉が返ってくるんだろうか?
「ん,俺?ん――・・・キラ,かな?」
そうな事を言って,アスランは笑った。 はぐらかされたんだろうか?
「何言ってるの? アスランには婚約者がいるでしょ?」
内心半分嬉しくて,半分悲しくて苦しい気持ち。 何でもないように,僕は装う。
「嘘じゃない。 今,俺はキラを大切にしたい」
「アスラ・・・・・・」
名前を呼んで,そんな冗談を言うのは反則だと言おうとしたのに。
アスランの真剣な瞳を見て,僕は何も言えなくなった。

視線が絡み合う。 目を逸らすことが出来ない。

「キラ・・・・・・」
熱っぽい声で呼ばれて,僕はもう何も考えられなくなった。
嬉しかった。 大切だと言ってもらえて嬉しかった。

腕を掴まれて,唇が重なった。

僕の初恋は,実ったのだろうか?





嬉しかった。
幸せだった。
だけど,考えられない頭の冷静な部分が,僕のココロに問いかける。

「婚約者は? どうなるの? 僕が幸せになった。 けど,婚約者は?」





愛人のような関係。 ような,じゃなくて,「愛人の関係」だ。
僕は,思わず笑ってしまった。





僕の初恋は,22歳の時。
相手は同性。
相手には婚約者がいる。
愛人関係。
これが僕の初恋。



4月,桜の舞い散る季節に,僕は初めて恋をし,その恋が叶った。










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