Birthday 2話:愛人 |
人肌に触れることで,僕は幸せを知った。 互いの仕事の話。 好きな事。 趣味。 取り留めの無い出来事を僕たちは,話した。 「アスランの小さい頃って,どんなのだった?」 今のアスランを少しだけだけれど知った今,昔の小さな頃が少しだけ気になった。 アスランは少し考えるような行動を見せてから,口を開いた。 「勉強ばっかりだったけど。 傍からから見れば,ただのガリ勉にしか見えなかったと思う」 アスランの言葉は,余りにも想像に容易くて,僕は思わず笑いを零してしまった。 今,大手企業の時期社長としての,準備をしているらしい。 休日だけが,何よりの休みなのだという。 僕は,そんな日々の生活に疲れきったアスランを,僕はこんな休日に癒せているのだろうか? 帝王教育を受け続けてきたアスランは,もう今の状況には不満などないと言う。 不満を言っている時間がないとも言っていた。 どれ程大変なのか,言葉だけでは何も分からないけれど。 僕と過ごす時間で,アスランの疲れた気持ちが少しでも和らげれば,と思う。 「キラは?」 「僕・・・・・・?普通に,同じクラスこの子と遊んだりしてたよ。アスランみたく,勉強ばっかりなんて無かったよ」 「ふーん。キラっぽいな」 アスランは笑った。 「そうなのかな?」 暖かい日差しの差し込む窓辺。 ティーンエイジャーみたいなカップルみたいに,手を繋いで,肩を寄せ合って。 軽く啄むようなキスから,絡め合うキス。 真昼間から,行為に及ぶこともあった。 「キラ」 「ん?」 呼ばれるままにアスランの顔を見ると,頬をアスランの細く長い指に捕らえられた。 重なり合う唇。 少し厚みのある,唇。 舌が,僕の唇の間を縫って,口内の舌へと絡める。 暫くの間,僕はアスランの巧みなキスに翻弄され続けた。 「最近はご機嫌だな」 尋ねたイザークは忙しそうに,書類をパソコンに打ち込んでいる。 それでも,話しかけてくれるのだから,イザークは本当に優しい。 「そう見える?」 僕はイザークの顔を見たけれど,やっぱりイザークは僕の顔を見なかった。 いつもは,瞳を見て話してくれるイザークなのに。 凄く,忙しいのかも,しれない。 「もの凄く,な。どのみちアスランが絡んでいるんだろう?」 イザークはアスランと従兄弟に当たるらしい。 「・・・・・・・・うん。別に,何処にも行かないで,ずっと部屋にいるだけなんだけどね」 言うと,イザークは書類に目を通したまま,けれど顔を苦そうに歪めた。 「あんな奴のどこがいいんだか・・・・・・」 毒のような言葉が,聞こえたけれど僕は何も言わずに笑った。 小さい頃に,僕の父さんと母さんは死んだ。 家族ぐるみで付き合っていた家の誰かから殺された。 要は裏切られた,ということだ。 僕はたまたま生き残った。 それは,僕が6歳の時。 当たり前だけれど,一人で生きられる訳でもなくて。 そこで,僕はイザークの家に住ませてもらうことになった。 法律上で何かしたわけでもないから,他人のまま。 それでも,僕の世話をイザークの母さんが見てくれた。 信じたところで,裏切られ。 殺された,両親。 それから,人を信じるのが怖くなった。 あんまり笑えなくなった。 人をスキになるなんて,出来ないと思っていたけれど,思わぬ変化が,アスランへの初恋。 遅かったけれど。 アスランを見る度に,笑顔が漏れるようになった。 今までとは違う笑顔に,イザークは嬉しそうによかったなと言ってくれた。 嬉しかった。 「キラぁ,聞いてよ!」 休日である今日,急ににアスランに用事が出来てしまい,暇になった僕の所にミリアリアがやってきた。 本当は,アスランと過ごす筈だったのだけれど。 用事と言われて,引き下がる他なかった。 桜も散り,青葉が覗き始めたゴールデンウイーク。 オープンカフェで過ごす,昼下がり。 「どうしたの?」 「トールが,他の子と一緒に歩いてたの!!!」 それはもうとても悲惨そうに,と言わんばかりにミリィは言った。 しかし,そんなに,悲しいことなのだろうか? けれど,そんな事を言えば,何を言われるかたまったものではないので,敢えて口には出さない。 「女の子?」 「そうよ!!しかも嬉しそうに!!」 空になった,エクスプレッツの入っていた紙コップをミリィは当たり場といわんばかりに一握りで潰す。 僕は,一体どんな言葉をかけたらいいのか分からないから,うんうんとだけ頷いた。 「やっぱり,他の子と一緒にいるのは嫌?」 「嫌に決まってるじゃない!! そうよね,キラには好きな子なんていないものね・・・・」 そうして,盛大に息を漏らす。 「大切で大切で仕方がないの。 これ位,とかそんなものさしで図れるようなものじゃないしね・・・・・・」 熱く語りだしたミリィをそっちのけで,僕は考えた。 大切。 僕はアスランが大切だ。 好き。 確かに,浮気なんてされなくない。 大切,なんて言葉だけでは,表現が出来ない位。 ずっと一緒にいたい。 ずっとずっと・・・・・・・・。 「・・・・・・・・・・・・・・!」 「キラ,どうしたの?」 思わず息を呑んだ僕に,ミリィは声を掛けてくれたけれど,それさえもどこか遠くに聞こえる。 「何でもないよ」 そう言いながら,僕の背中に一筋の汗が垂れた。 アスランには,婚約者が居るのだ。 それなのに,僕は婚約者のいるアスランと付き合っている。 ミリィは,浮気がもの凄く嫌だと言っていた。そんそ気持ちが分かったような気がした。 だけど,僕は浮気の要因になっている。 それは,ある意味,裏切りのようにも思えた。 手には,汗が握られていた。 |
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