Birthday


5話:しあわせ






星の瞬く夜。
アスランに再びしてもらったキスは,とっても甘くて,そして少し苦味のある,そんな味がした。











キスをした後僕達は,側にあったベンチに腰を掛けた。
「何から言ったらいいのか分からないんだけれど・・・・・・まずは本当にごめん」
告げられる言葉はとても重い。
その重さは,アスランの心の内を語っているように,僕には感じられた。
「ううん,もういいよ」
かぶりを振って,彼の言葉を否定するとアスランは益々申し訳なさそうな顔をした。
「キラが良くても,俺はよくない。 ちゃんとケリをつけたいから」
そこまで言うのなら・・・と僕は思い,アスランの言葉を聞くことにした。
「好き勝手にキラを振り回してごめん。
 婚約者とは,ほとんど名前だけのもので・・・・。彼女,ずっと病院に寝たきりの子で・・・・・・
 たまたま病院で会って,よく話すようになったんだ。
 小さい頃から病院と一緒に生きてきて,・・・・・・もう自分の命が長くないことを知っていたみたいでさ。
 『私も女の子のように生きたかった』って言うから,女の子のように生きるって意味を尋ねたら,誰かのお嫁さんになることだって言うんだよ。
 命が長くないから,相手の事を考えると付き合うことも出来ないってその子がいうんだよ。
 だから,俺は,彼女に『付き合おうか?』って言ったんだよ。もちろん結婚前提にという言葉を添えて。
 そしたら,その子が嬉しそうにありがとうって涙を流すんだ・・・・・・・。
 その時,俺は彼女が好きになったから付き合おうとか言ったわけじゃ,ない。
 ・・・・・・同情心・・・・・・・かな。 そんな中途半端な気持ちで付き合った。
 だから,キラみたいな愛人も作ったしね」
そこまで言うと,アスランは自嘲したように笑った。
「案の定,彼女の命が危なくなってね。 それがキラも知ってるとおりのつい一週間前。
 せめての少しの時間だけでも,彼女の側にいないと,と思って,キラとは別れた。
 それから急いで病院に向かって,ベッドに付き添っていたら,彼女が切れ切れに言ったよ。
 『婚約者になってくれてありがとう。 他の人を幸せにしてあげてね』 ってね。
 きっと,彼女は気付いていたんだと思うよ,俺が同情心で付き合ってたこと。
 それから暫くも経たないうちに亡くなって。
 何もかも全てが終わって一人になったときに,キラのことを思い出した。
 そんな時,キラならどんな言葉をくれるんだろう,とかどんな雰囲気を作ってくれるだろう,とか。
 そんなことを思っていたら,本当に大事にしたいのはキラだって気付いてさ。
 だけど,都合が悪くなってからキラを手放したから,自分から連絡をすることも出来なくて,イザークに相談したら,今日のことを教えてくれて。
 急いで来たんだよ。
 携帯に,何度連絡を入れても繋がらないし,もしかしたら,もう海には居ないかもしれないと思ったんだけど・・・・・」
そこまでアスランが言ったところで,僕は思わずアスランに抱きついた。
確かにアスランの都合ひとつで振り回されたけれど,アスランだっていろいろ思いつめたる考えたりすることがあったんだと思うと,
急に抱きしめたくなった。
「僕の方こそ,ごめんね。 アスランのこと,何も分かってあげられなくて・・・・・・」
何故だか,涙が出た。
抱きしめてられている手が,押し付けられた胸板が暖かくて。

滲んだ視界の先には,そこにも涙で滲ませた顔があった。

お互い,しっかり瞳と瞳で相手を捕らえる。

それから,キスをした。










「アス・・・・ラ・・・・・・スキ・・・・・・・・・・・・」

「愛してる,キラ」










「今日はえらく早い上がりだな」
仕事をさっさと終えてしまい,就業時間を終えると僕はいそいそと帰り支度を始めた。
「うん,そんなことを聞くなんてイザークも無粋になったね」
「・・・・・・・・・・・・・・今日一日何気に機嫌がいいのも・・・・・・・・・・・・あぁ,成る程な」
どうやら,イザークは自己完結をしたらしい。
僕はイザークに向かって,ニコニコと笑いかけた。
「じゃ,お疲れサマー」
「デート,楽しんでこいよ」

ドアを抜けると同時に,そんな言葉が返ってきた。

エレベーターを使ってエントランスへと向かうと案の定,アスランが待っていた。
「今日はどこに行く?」
アスランの言葉に僕は間あけずに答えた。
「アスランとなら,何処でもいいよ」
















薄荷キャンディの全ての無断転載を固く禁じます。
All text on this web stie are copyright(C)2007- Peparmintcandy yurikaoru