if 〜もしもアスランとラクスが結婚し,キラがその子どもなら〜






遠い昔。
「ピンクと青なら,紫の子どもが生まれてきますわね」
そう言った彼女の言葉をアスランが忘れることは無かった。
だから。
結婚,まで最大限の譲歩をしたが,それ以上は流石のアスランには我慢ならなかった。
「断固,します」
アスランは自分の父,そしてラクスの父の前で頭を縦に振ることはなかった。







「残念ですわ」
こころの中ではそんなことはこれぽっちも思っていないだろうに,ラクスはため息まで吐いた。
うまい演技,とでも言おうか。
まぁ,国民のアイドルとも言われているのだから,多少のそれが出来るのも致し方ないだろう。
それでも,自分の前でもそんなフリをしなくてもいいだろうと思う。
「紫色の髪の毛の子ども・・・・・・」
呟くラクスにアスランは返す言葉もなかった。
後ろ髪引かれるように・・・・・・否,恨めしそうに言う彼女は大きなガラス窓に目を向けている。
朝日が大きく入れることが出来るこの家は,いつか小さな子どもと住めるようにと,そう設計されている。
確かに子どもがここに,この世界に足を踏むことが出来ないのはとても残念だと思う。
子どもの目に優しくなるようにと木目をふんだんに使った家は,ふたりだけが住むにはとても寂しく感じられるのは,またアスランも同じだ。
ラクスと同じように。
それでも,紫色の髪の子どもが欲しいとは思わなかった。
紫紫,と言っているが,髪の毛の色など変えることは出来る。
別に黒にだって茶色にだって青でもピンクでも。
アスランが思っているのはそんなことではない。
少なくとも,ラクスの血を引き継いだ人間をこの世に排出する訳にはいかないのだ。
絶対に。
これは,絶対に譲れない。
こんな悪魔の生まれ変わりであろう人間が,これ以上増えるわけにはいかない。
結婚,なんて紙切れだけの約束を交わすのと,訳が違う。
「アスランは私達の子どもが欲しくないのですか?」
尋ねられると,アスランには答える言葉が無かった。
どうしてこの人間に「あなたの血をこれ以上増やしたくないのです」と,言え様か?否,きっと誰も言えまい。






どうしたらいいのか,友人のニコルに電話した。







言い訳,という言葉は,本当によく出来ていると思う。
いいわけ,良い訳。
自分にとってのいいわけ。
アスランは言葉のすばらしさに,思わず噛み締めてしまった。







子どもが欲しいというラクスを連れてやってきたのは,とあるセンター。
「どこに行くんですか?」
尋ねる彼女に,とりあえずついてきてくださいと,歩くこと20分。
不思議そうな顔をしていたラクスも,謎の晴れた顔をした。



受付の人間に名前を告げると,ある部屋へと連れて行ってもらった。
四畳半ほどの部屋に絨毯がひかれた部屋には,小さなかこいがされていた。
「今日,ラクスに来てもらったのは,引き取りたい赤ちゃんがいるからなんです。
 乳児院,とあったでしょう?」
言うと,彼女は頷いた。
「名前にあるように,見捨てられてしまい,親が分からない若しくは親から押し付けられた子がいるんです。
 その中で,とても可愛らしい子を見つけたんです」
小さな囲いをふらふらとした足と手で歩き回る赤ん坊の視線は,突然部屋にやってきたふたりに注がれている。
アメジスト色の大きな瞳がこちらを覗いていた。
茶色い髪の毛,がとてもふわふわしているように見える。
「この子は道端に置かれていたのを保護されたんです。
 血液型の検査からO型だということが分かっただけで,後は男の子という以外に何も分かりません
 正確な誕生日も分かっていないのですが,ある程度の成長を見て,まだ生後六ヶ月位,だそうなんですけど」
そういいながら,アスランはその赤ん坊を抱えあげた。
抱き上げてもらった赤ん坊は嬉しいのか,キャキャっと笑う。
「可愛くないですか?」
黙ったまま反応を返さない彼女が妙に怖い。
表情はないと言えど。
「赤ん坊にしては,夜鳴きや無駄な泣きも少なく,他と比べれば大分おりこうな・・・・・・」
「引き取りましょう!!!大切に,この子を育て上げますわ!!!」
アスランの腕から赤ん坊を受け取ると,ラクスは大事そうに抱いた。



・・・・・・この二人の中の法律は,ラクスにあるのは言うまでも無い。
まぁ,今回の赤ん坊については,アスランにも異存はなかったが。



帰り際,近場のデパートによって,買えるだけの用品を買った。
ベビー服。哺乳瓶。紙おむつ。その他諸々。
ベビーカーはいらないのか?とアスランが尋ねると,「そんなものは必要ありませんわ!大切な我が子ならちゃんと腕で抱いてあげられるでしょう」とにっこりと返されてしまった。

家に着いた時には,キャキャ笑っていた赤ん坊もぐっすりとアスランの腕の中で眠っていた。
その顔は,とても幸せそうで。
茶色い髪の毛を撫でた。
「今まで悲しい思いをしたのでしょうか・・・・・・?」
寂しげに言うラクスに,アスランはどうだろうな,と零した。
「三歳まではしばいてもいいけれど,三歳を過ぎたらしばいてはいけないとあるんですよ。
 きっと大丈夫です,今なら。
 これから,この子を幸せにしていけたらいいのだから」
沈む雰囲気をを打ち消すようにアスランは話を振った。
「市役所にも届けを出さないといけないですが,名前を決めませんか?」
「そうですわね・・・・・・」
少しの沈黙の後,出てくる言葉は同時だった。
「「キラに」」
「あら・・・・・・アスランもキラ,という名前を考えていたのですか・・・・・」
「ラクスこそ・・・・・・!!一緒の名前を考え付くなんて,思いもしなかった」
「では,決まりですわね。この子の名前はキラ,でいいですわね」
アスランの腕の中に眠っている『キラ』のちいさなちいさな手のひらを触りながら,ラクスは呟いた。
「幸せになってください,私たちが頑張って彼方を育てますよ・・・・・キラ・・・・・・」






傍から見て,これで落ちついてよかったと思いながらも,本当にこんなに可愛らしい子どもが自分の息子になってくれてよかったと思うアスランであった。













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