しあわせの在処。 一緒にお祝いしようね。 ふと,キラの言葉が思い浮かんだ。 |
全治2ヶ月といったところですね。 カルテを持ちながら,担当医らしい白衣を着た医者はそう告げた。 まずキラに,約束が反故される形になってすまないと謝ると,キラは何でもないと謝った。 「こんな怪我ですんでよかったね」 「あぁ,全くな」 怪我は,足首の複雑骨折。 原因は,単に横断歩道を歩いていたら,信号無視をしていた大型トラックが突っ込んできたのだ。 「イザークの家で盛大にパーティをしたかったんだけどね。残念」 「すまないな」 「ううん。時間が許す限り,イザークの傍にいるからね」 キラの隣に腰掛けるアスランは,もくもくとりんごの皮を剥いている。 と,顔を急に上げた。 「知ってるか,イザーク?キラ,お前が事故に逢ったって聞いて,その無事な姿を見るまで泣いていたんだぞ。な,キラ?」 言われたくなかったことなのか,キラは一気に顔を赤くさせた。 耳まで赤い。 「アスラン,五月蝿い」 「はいはい。キラは恥ずかしいんだな」 「アスラン!!!」 その二人のやりとりを遮ったのは,さり気ない,イザークのセリフだった。 「仲いいんだな,本当に」 いちはやく敏感にその声を聞き取ったのは,キラだった。 「ディアッカとは,仲悪い?何かあった?」 声には出さないが,アスランも一体何があったのかと,その瞳が雄弁に語っている。 今更隠しても仕方がないか,と思い,イザークは自分のことを言葉にした。 「仲も糞も,最近1週間位逢ってないからな」 さらっとしたイザークの口調ではああるが,奥のほうにはなにか寂しさも交じり気味で。 「電話もない?」 心配げなキラの口調に,こんな話はしない方がよかったのだろうかと一瞬考え込んでしまう。 「まあな」 暫く落ちる沈黙。 「ごめんね。なんだか見せ付けるみたいになってしまって」 「キラが謝る必要はない」 と,そこにうさぎの形をしたりんごののった皿をイザークの前に置くと,アスランは席を立った。 トイレに,と言葉を残して。 部屋には,イザークとキラの二人きり。 「本当は,寂しいでしょ」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「何してるのかな,ディアッカ」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「きっとね,ディアッカ,イザークのこと,捨てたりしないよ?」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「今日は,来てくれるといいね」 夏の雲が,窓から鮮やかに見えた。 「ごめんね。ちょっと用事があって」 抜けられないというキラは申し訳なさそうな顔で謝りっぱなしだ。 「今日はありがとうな」 そして,キラは手のひらサイズの,綺麗に包装された箱を差し出した。 「僕とアスランからの誕生日プレゼント。気に入ってくれるといいんだけどね」 中から出てきたのは,香水と有名ブランドの腕時計だった。 「ありがとうな。早速使わせてもらうよ」 「ディアッカ,ちゃんと来るかな」 「そんなに酷い人間じゃないさ」 「そう・・・・かな・・・・ううん,きっと来るよね」 そう呟くと同時に,キラの唇に重なるアスランのそれ。 「キラ,イザークとディアッカの心配ばっかり」 呟く声とその声は,嫉妬という言葉に値して。 「一番はアスランだよ」 キラも,アスランに啄ばむようにして,キスを返した。 誰もいない病室に,沈黙だけが広がる。 やはりイザークは来ないんだろうか。 あれだけ一時は電話だほらなんだと色んなことをしてくれた癖に,今になって。 何の音沙汰もない。 もしや,自分にはもう愛想を付かしたのだろうか。 嫌なところがディアッカの癪に障ってた? 考えれば考えるほど,ネタは尽きず。 もう後何分もすれば,面会終了の時間だ。 イザークは,もう考えることも,待つことも放棄し,布団をがばっとかぶり込んだ。 何も考えずに息を潜めていると,廊下で歩くひとの足音や話し声が聞こえる。 と,そんな静かに響く廊下から,走っているであろう足音が聞こえてきた。 それが,自分のいる病室に近づいていっているなぁとボンヤリ考えていたら,急に勢いよく戸が開いた。 「イザっ,ごめん!!!」 声の主を自分の目で確かめてたくて,布団を剥いだ。 茶褐色の肌に金色に輝く髪の毛。 ずっと走っていたのか,肩で息をしている。 「本当にごめんな」 「ディアッカの馬鹿」 「遅くなってごめん。誕生日おめでとうな」 「遅すぎる!! 来ないかと思ったんだぞ」 目じりに光る涙を見て,ディアッカはイザークをきつく抱きしめた。 それからディアッカは思う存分イザーク自身を確かめると,きつく抱きしめていた腕を放し,イザークに向き合った。 「俺からの誕生日プレゼントは日本舞踊」 「・・・・・・・・・・・・ありがとう」 「実はさ,出張が日本だから,プレゼントに贈れるような舞を習ってたんだけどさ,こことの時差があることすっかり忘れててさ。 急いでアスランにチケットをとってもらった訳。 本当に遅れてごめんな」 「でも・・・・・・・・・」 「でも,の続きは?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・プレゼントなんて,いらない。 お前がそばに居てくれるだけでいい」 思わず我慢がならず唇を奪うディアッカ。 驚きつつも,イザークはしあわせな時間を身に染込ませていた。 そして,二人は面会終了時間であることも忘れて,舞踊を踊り,見ていた。 その後。 見回りにきていた看護師にふたりしてこっ酷く説教されたのは言う間でもない。 なんせ,ひとつのベッドに二人が仲睦まじく寝ていたのだから。 |
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