知らない世界。2 |
どこにでもあるようなシティホテルにふたりは入った。 キラがシャワーを浴びてくると行ってから数分後,髪の毛に水分を滴らせ,バスローブを着て戻ってきた。 彼は,ただぼんやりと見ていたテレビの電源をオフにする。 色気を放ったキラが男性へと近づき,ふたりは唇を重ねた。 はじめは啄ばむだけであったが,それは段々と深いものになっていき,部屋には淫靡な音が響いた。 そしてどちらともなくベッドに座る。 唇を離し,彼はキラの紐を解き始めた。 解いたそれを絨毯の上に落とし,狭間から手を伸す。 胸の飾りをつままれると,キラは微かに吐息を漏らした。 「・・・・・・・・・・っ・・・・・・」 理性がなくなる前にしておかないことがある。 キラは,それをするために,彼に今は止めるようにお願いして,自分の鞄を探りに行った。 いつもいれている場所から取り出すと,キラはそれを手に彼の元に向かった。 それを口に銜え,男性の履いているズボンを緩め,それに手をかけた。 ようやく男性はキラにしようとしている行動に気付く。 しかし,意味は見いだせなくて尋ねた。 「コンドームって男同士には必要なものなのか?別に孕ませるような心配はないだろう」 何でも無いようにいう彼に向かって,そうではないよとキラは言った。 「ゴムには感染の防止もあるでしょ。僕にあるとかないとか別にして,貴方も行きすがりの人間と肌を合わせるなら付けるべきだよ。 もしかしたら,僕にあるかもしれないんだから」 言うと,そうか・・・と納得したように彼は呟いた。 「・・・・・・・でも」 納得したと,キラは思っていたから彼の言葉に耳を傾けた。 「君は,自分が病気を持っていたら,相手と寝ないと思う・・・・・・」 少し不安そうに,それでもこの男性にある,組織の上につくような威厳を持って言う。 キラはそうかな,と言葉を零した。 「俺には結構人の見る目があると思うからから・・・・多分当たってるんじゃないかな」 そう言う男性の瞳は,とてつもなく優しい光を秘めている。 あまりにも眩しく,そして遠い存在のようにキラには感じられた。 「なんでもいいから・・・・ゴム付けて,しよ?」 優しくしてもらうことに慣れていないキラはこの雰囲気が苦しくなり,自分誘うような色目を使った。 早く,こんな空気がなくなればいい,と思いながら。 行為が終わり,呼吸が落ち着いた頃彼は隣に横たわるキラに静かに話しかけた。 「いつもこんな風に,知らない相手と寝ての,きみは?」 言われた言葉に,キラは頷いた。 今までならそれなりに言葉を返していた筈なのだが,今回はそうもいかなかった。 どうしても,この男性にはそういうことはあまり口にはしたくなかった。 理由は,分からない。 「そうか・・・・・・。君はこんな俺みたいな男で,満足できたのか?」 満足出来たか? 満足とか,そういう感情ではない。 何か,言葉では言い表すことの出来ない,こころと身体がやさしく包まれたような気持ちになった。 しかし,それを口にすることは出来ず,再び頷いた。 「付き合ってくれてありがとう」 何か言いたくて,結局見つけた言葉はありきたりな言葉だった。 今までにないようなことをこの男性からはしてもらった。 行為中に,背中を撫で,しきりに尋ねる,自分を気遣う言葉。 何度「大丈夫か」と言ってもらったか,キラにはもう途中で数えることが出来なくなっていた。 今までなら,施しもなく突っ込まれたことも,縛られ自由を奪われたこともある。 それに比べれば,幸せであるようにも感じられた。 「そういや・・・俺達お互いの名前も知らないんだな・・・・。俺はアスラン・ザラなんだけど。君は?差し支えが無かったら教えてくれる?」 今までの人間たちには,本名なんて言ったことがなかった。 でも,この男性――アスラン――になら言ってもいい。 「キラ・ヤマト・・・・・・」 「キラ・・・優しい名前なんだな」 目を細め,慈しむように彼は言った。 「キラって呼んでいい?」 「うん」 「俺のこと,アスランって言ってくれていいから」 そう言うと,アスランはキラの瞳をじっと見つめた。 「綺麗な瞳をしてるんだな,キラは。こころが綺麗な証拠だ」 初めて言われた言葉に,キラは胸が温かくなるような感覚に見舞われる。 嬉しくて,ありがとうと言おうとした時,キラはあることに気付いた。 「アスラン・・・・・チェックアウトの時間があともう少し・・・」 アスランの腕についたシルバーの時計を見てキラは言ったが,アスランはあまり慌てたような行動を取らない。 「キラは,何か用事がある?」 「ないけど」 「じゃあ,後もう一泊しようか。もっとキラと居たいよ」 少し笑みを顔に浮かべて彼は言う。 こんな自分と一緒に入れて,彼は嬉しいんだろうか? 「別にいいけど・・・」 「じゃあ,フロントに電話するからちょっと待ってて。すぐに終わると思うから。 それから色々話そうな」 ベッドから絨毯に足をつけ,電話のある方へとアスランは向かう。 キラはそんな彼の姿をじっと見つめていた。 いつの間にか,キラの方がおとなしくなり,アスランのほうがまるでキラを誘ったようなふうになっていることに,ふたりとも気付かなかった。 |
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