大切なこと。

第12話*時計






クリスマス当日。
もしかしたら,今日くらいアスランは帰ってきてくれるかもしれない。
リビングのソファに座って,そんな想いを馳せた。



テーブルの上には七面鳥をセンターに,時間をかけた作った料理が,並んでいる。
別に,アスランと特別約束したわけではないのだけれども。
それでも,何か考えてくれたならば。
クリスマスというイベントを少しでも省みてくれたなら。
25日中に,この部屋に戻ってきてくれたなら。
もう,何もいらないと自分は思える。
満足できる。
このことを思い出にすることが出来る。
アスランがどんな女性と結婚したとしても,笑顔で見送ることが出来るのに。
そう決めているのに。
時間は刻々と時を刻んでいる。



出合って。親友というものになって。恋人になって。
楽しかった思い出ばかりが,目の奥に浮かぶ。
いつの間にこんな風になってしまったんだろう。
どうして,楽しかった時間を自分から終わらせないといけないのだろう。
ひとの責任にするのはよくないと分かってはいるのだが,そんなことはよくありがちな「分かっているつもりで,実際分かっていない」というのと変わりない。
どうして,アスランは何も話してくれなかったのだろうか,と。
ごめん,と一言言ってくれていたなら。
ちゃんと訳を話してくれていたのなら。
ちゃんと諦めることが出来たのかもしれないのに。



時計と睨めっこしているのに少々疲れを感じたキラはソファを立ち,ひとつひとつの部屋をゆっくりと見て回ることにした。
といっても,部屋の数がそれほどあるわけではないが。
まずは,もう明日から使うことのないだろう部屋の扉に手をかける。
引越し業者に任せてしまった部屋には,もう何もない。
いつも部屋に入ると一番に目についていた写真も,今まで使ってきていたベッドもボックスも,もう何もかもない。
そこには,少しの生活感ももう感じることは出来なくて。
少し寒々しい気持ちになる。
もしかしたら。
ここにアスランと結婚する女性が来るのだろうか?
自分ではない,誰かをこの部屋に居れ。
そして,自分と同じように,または自分以上に愛されるのか。
そんなことは,もうキラにはどうでもいいようにさえ感じてしまう。
ただ。
アスランの顔を見て,「好きだったよ」と。
それだけでいいから。
今はもう違っても,過去にこの人に愛されていたのだ,という実感が欲しかった。
親友から,恋人になって。
結果的には恋人の時よりも親友の時の方が,もっと距離が近かったと思える。
もっと,いろんなことを話して,笑って。
親友だから,連絡が来なくても別に不安じゃない。
仕事が大変なのかなとか,そんなことを思って,相手の健康を思いやったりするだけでいい。
でも恋人となれば,スキンシップだとか一緒に何か,とか。親友以上に気を張らなくてはならない。
親友のままなら,今頃こんなことにはならなかっただろうか。
刹那的にそんな考えが思い浮かんだが,今更もう遅い。
きっと,アスランの部屋を出れば,もうきっと逢うことはないだろう。
きっと半永久的に。



静かに時間が過ぎていく。
分刻みで時間を刻む時計をキラは見つめる。
それは次第に,秒刻みとなり次の日を迎えようとしている。
コツ コツ コツ コツ
見ている間に時間は十二時を越した。
暫く,時計から目を話すことが出来なくて,キラはただぼんやりと空を見つめていた。
そこには悲しみとも,何ともつかない表情があった。
















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