大切なこと。 第2話*互い |
夏の日差しもいつの間にか消え,緩やかな日差しと冷たい風が秋を包んでいる。 今までの近くにいるようで,近くになかったふたりの距離を埋めるように,ふたりは寄り添うように時間を過ごしていた。 何をするでも一緒。 食べるときも。寝るときも。 本を読むときも。 仕事は違えど,家に居るときは本当に何をするでもなく。 いつも一緒なのだ。 ただ,しあわせをしあわせだとかみ締める時間が,ふたりの中を流れている。 会社に着いてから,自分の席につくと,すぐ近くにいるニコルが声を書けてきた。 「おはようございます,キラさん」 「おはよう」 緑色の髪をもつ同期のニコルは,ピアノがもの凄くうまい。 キラは一度だけ聞かせてもらったことがあるのだが,本当に上手かった。 「今日から一週間,暖かい日が続くようですよ。今日,マフラーを巻いてられましたよね?」 目ざといニコルは,キラをよく見ているようだ。 「え,あ,早いかなーって思うんだけどさ・・・・・」 突付かれたところは,少々苦しくて。 キラは,苦しいながら,言葉を濁した。 「誰かからのプレゼントですか?」 濁したところにこんなセリフを食らうから,キラは咳き込んだ。 「・・・・・・・・・・ビンゴ,ですか?」 笑って言うのだから,このニコルは本当に悪魔なのかもしれない。 そんなことをぶつぶつとぼやきながら,黒いオーラを放つニコルを見つめた。 「うん。貰った」 言わないと益々何か付かれそうだと思うキラは言われる前に,応える。 「まっ,その調子でしたら,スキな子か大切な人から,が妥当な線ですよね」 別に口にしなくても,いいようなことをいちいち口に乗せるのだから,たまったものじゃない。 「それに,あのマフラー,かなり値の張るものですよ?大切にされてますねー」 いちいち応えていれば,ますます突付かれるのだな,とキラは解釈した。 今日は,アスランは遅いって言ってたよね・・・・ そんなことを考えながらキラは自分の部屋で部屋着に着替える。 一応,一緒の家に住んでるといえど,部屋は別々だし,電話線のコードも二本引いてある。 部屋を出ようとすると,アスランの部屋から電話の音が聞こえてきた。 誰も居ない部屋で,留守電が応答している。 『アスラン?居ないの?もう,いつ電話しても居ないんだから・・・。いい加減にして欲しいわ。 アスランから電話してちょうだい?・・・あなたいつも電話してくれないんだから・・・・・・』 ―――アスランも大変なんだね・・・ そんなことを思いながら,キラは台所へと向かった。 「ただいま」 「お帰りなさいー」 火を使っているキラは,玄関へと迎えにいくことは出来なかったが,大きな声でアスランに応えた。 「留守電,おばさまから入っているよ」 「すまないな,いつも」 キラとアスランの声が響いた。 |
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