大切なこと。

第4話*無知








季節は目まぐるしく過ぎていく。
年末――といっても未だ二ヶ月弱あるのだが――ということもあって,ふたりは仕事で手一杯な日々を過ごしていた。
キッチンも使わず,洗濯物も溜めっぱなし。
ゴミだって辛うじて分別されているだけマシだともいえる。
アスランは自身の部屋の留守電はいつまでもチカチカと点滅されたままであったし,またキラがそれに何らかの形で気付くこともなかった。



帰宅時間もずれれば,出勤時間も違う。
顔を会わせない日が続いていたが,たまたまその日は朝目が覚めたら,アスランが居る,という状態だった。
「あ,おはよう」
久しぶりに会ったような感じがし,少し嬉しいような気持ちになる。
「おはよう。キラ,無理してないか?」
まだパジャマを着込んでいるキラに対して,アスランはもう背広を着込んでいる。
まだ,ばたばたした日々に追われているのだろう。
「大丈夫,大分目処が立ってきてるし。アスランこそ,大丈夫?」
尋ねるとアスランは優しく笑った。
「俺はキラと違って,自分の健康管理はちゃんと出来てますよ?」
「もぅ・・・心配してるのに・・・・・・・」
確かにアスランの言っていることはまんざらでもないわけで。
「仕事,無理しないでね?まだ大変?」
「ああ,未だ未処理のものが目立っててな。体が二つくらい欲しいところだ」
言うと,キラはそっかと呟いた。
「どうかしたか?」
小さな言葉すらも聞き逃さなかったアスランに,キラは何でもないよと首を振る。
「何かあるんだろ。溜めるのは良くないぞ?」
「あ・・・・・・うん,そろそろゆっくりした日を一緒に過ごしたいなぁ・・・・って・・・・・・」
言いながら声が小さくなっていく。
最近全くゆっくり出来ていないのだから,キラが言うのも仕方が無いはずだ。
「そうだな・・・検討しておくよ。約束する」
ごめんなと付け足すと,キラは頭を振った。
「ううん,アスランこそ忙しいのにごめん」
仕事頑張ってね,その言葉に見送られてアスランは家を後にした。

















結局,一緒にゆっくりする時間をアスランは作りはしたが,また次の日から慌しい日が続いていた。
そして,その日もキラは留守電が録音をされている瞬間を耳にするのだった。
機械音を聞きながら,やっぱりアスランは忙しい身なのだろうか,と思う。
相手は今回もアスランのおばさんらしい。
「アスラン,いい加減にしてて頂戴?あなただってもう社会にでているのだから,それ位分かるでしょう?
 相手のお嬢様にも迷惑掛かるのよ。あなたにちゃんとお付き合いしているお嬢様がいるのならそうだと言って頂戴。
 それでもう返事がないのなら,もうこちらで話を進めますからね」
―――どういうこと・・・・?
今の話はきっとアスランの結婚についてのことだろう。
アスランにおばさんはずっとお見合いの話をしていたのだろうか。
この間の電話でも。
と,いうことは。
ずっと長い間,その話をしっかりしないままでアスランはいるのだろう。
今の時期が忙しくて,返事を返すこともままならないのだろうか?
―――そうであったらいい・・・・・・
それは希望でもあり,そして希望とは言わず現実であって欲しい。
しっかりした確証も,何もないキラには混乱することしか出来なかった。












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