大切なこと。

第7話*辻褄





ニコルと話した次の日,自分の物忘れが大丈夫なのか,大丈夫でないのか自分で分からないキラは彼に言われるままに大学病院にいくことにした。

「ちょっと分からないので,検査してみます」
そう言われた。
脳に異常があるのかもしれない,という。
よく分からないが,先生の言葉には従うべきだと思った。

長い時間をかけた検査は,二週間後に分かる,らしい。

二週間の間,キラはぼんやりと部屋で暮らした。
アスランも帰ってこない。
静まり返った部屋の中で。


キラの部屋に電話が掛かってきた。
大きな電子音が部屋の中を響き渡る。
点滅するディスプレイが表示する名前はアスランの母のものだ。
少し電話に出るのに戸惑いがあったが,なり続ける音にキラは耐えられなくなった。
「もしもし」
「あ,キラくん?ちょっと急用があって電話してるの」
あせったような声をこの女性からあまり聞かない。
「どうかしたんですか?」
「えぇちょっと・・・旦那が事故にあっちゃって来て欲しいのよ。手続きとかがあるから」
事故。
そりゃ大変だ。
キラはふたつ返事で応えた。
「分かりました。アスランに伝えます」
「ごめんね,キラ君。モバイルに連絡入らないよの。職場に電話してもらえる?」
「はい,では失礼します」
慌てて切ると,キラは折り返し,アスランの職場に電話をかけた。
短縮を押すと,ものの数秒で電話口の女性が出てきた。
急いでアスランに電話を回してもらえるようにたのむと,少々お待ちください,と保留が流れた。
「こんなときに何をしているんだよ・・・・・・」
相手が電子音であるにも関わらず,思わず本音が零れる。
仕事が大変であっても,いつでもモバイルには出れるようにしておくべくだろう。
暫くの時間が経って,ようやく回線に戻るような音がする。
アスラン,と呼ぼうとしたが,相手は彼の声などではなく。
「申し訳ありません」
出てきたのは先ほどと同じ女性の声だ。
思いもしない返事と,期待の外れた声にキラは思わず聞き返してしまった。
「へ?」
「大変申し訳ありませんが,もうICカードにタイムが押されています。もう大分前に会社を後にしたようですが・・・」
「ありがとうございます。すみません」
そう言って,キラは電話を切った。
電話機を戻して,息をひとつ吐く。
一体どういうことだ?
アスランは仕事に出ていたのではないのか?
たまたま今日だけなのだろうか?
ずっと仕事といいながら,違う場所へと,違うことをするために向かっていた?
何故?
どうして自分に何も言っていない?
――自分に言えない,こと・・・・・・。
何となく思いつくところもある。
この間のアスランのお母さんの電話が・・・・・・。
そういう風に考えてみれば,おかしい。
仕事が連日続き,家に帰って来るのも遅い。
いつも大変だ,と言っているアスラン。

あぁ・・・・・・そうか。














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