大切なこと。 第8話*決意 |
「おはようございます」 何があろうとも,何時の日も何時もと同じように,朝陽は昇り夕日がは沈む。 毎日が,それぞれのスピードで過ぎていく。 ロッカーに入るとニコルがいた。 「おはようございます」 いつもと変わらない笑顔。 「おはよう」 自分のロッカーを開け,コートを脱いでハンガーにかけると,ニコルがこちらをじっと見つめていた。 「どうかした?」 「あの・・・・・寒い,ですよ,ね?」 一体何を尋ねようとしているのだろうか。 「うん・・・もう12月だしね・・・。寒いよ」 11月はいつの間にか終わって,もうこの年ももう30日足らず。 「あの・・・どうかしたんですか?・・・・・・・・振られました?」 全く意味が分からなくて,思わず「は?」と言ってしまいそうになるのを喉元で止めた。 ニコルが言いたいのは,きっと今までにつけていたあのマフラーだろう。 「ああ,あれねぇ・・・・・。別に振られたわけじゃないんだけどね,うん。ちゃんとあるよ」 今はクローゼットの奥にしまってある。 「そうですか・・・・・・」 きっとニコルなりに心配してくれているのだろう。 「大丈夫だよ」 キラは,ニコルに何も言われないように,先にロッカーを出た。 大丈夫とか,大丈夫ではない,とか。 一体どういうことなんだろう。 もうここ暫くずっとアスランの顔を見ていない。 アスランが帰ってこない,と以前は言っていたが,今はそうではない。 アスランが帰って来るような時間を狙って,キラが家を空けているのだ。 今,アスランに会って,自分がどういうふうに接すればいいのか,キラには全然分からなくなった。 あんなに仲良く,楽しく過ごしていた日々は今はもう遠い。 どこでどう,おかしくなっていたのだろうか。 長いような,短いような二週間を経て,キラは病院へと向かった。 「異常はありませんよ」 さらっと言ってのけた先生の言葉に,キラはそうですか,と呟いた。 「ですので,記憶がなくなってしまうのは,精神的なものと考えていいでしょう」 辛いことがあれば,カウンセリングを受けるといいですよ,とすすめられた。 辛いこと・・・・・。 辛くはないが,苦しい。 今の状況をどう乗り越えればいのだろう。 自分の家であるはずなのに,帰ることが出来ない。 大切なひとだと思っていたはずなのに,顔を合わせられない。 大切なひとだと思っていたのに,いまその人を信じることが出来ない。 まともに,顔を合わせられない。 どうしたら,いいんだろう。 きっと,これが原因,になるはず。 大切であるのに,それでも,もうダメだのだろうか。 何処で,どうかわってしまったんだろう。 どこが駄目だったんだろう。 あんなにも,大切だったのに。 涙が零れた。 手でまぶたを押さえるが,指と指の隙間からも雫が落ちる。 キラには,もうあの,アスランと一緒に座って笑っていたあの日を思い出すことが出来なくなっていた。 |
| 薄荷キャンディの全ての無断転載を固く禁じます。 All text on this web stie are copyright(C)2007- Peparmintcandy yurikaoru |