大切なこと。

第9話*来訪






どうすればアスランと離れることが出来るだろうか。
考えて,あるひとつの案が浮かんだ。

――この,一緒に住んでいる家を出て行けばいい・・・・・・

それも,このままだらだら家に居ないほうがきっといい。
思い立ったキラはすぐさま,近くのスーパーへとダンボールを貰いに行った。
しかし,家につき,誰も居ない扉を開けた間にキラは気がついた。
いつ扉を開けても誰も居ない家。
電気も点いていない寂しい家。
滅多とアスランは帰ってこないのだから,別にそこまで急がなくても大丈夫だろう。
そう考えると,何故か笑えた。



















それでも,この家に持ち込んだものは少なくない。
どれくらいの時間を要するのか,検討もつかない。

――どうせなら,ちょっとでも早い方がいいよね・・・

キラは沢山書籍の詰まれた棚から整理することにした。
少しずつその山を崩していくと,書類ばかりが目立つ。
ひとつひとつ目を通してから,ゴミ箱へとやる。
ゴミ袋が嵩張るもは面倒だから,手で簡単に契る。
ビリっという裂ける音を聞きながら,まるでこの紙は自分のようだとキラは思った。
いらなくなった,用済み。
そして破ってゴミ箱の中に捨てられる。
廃棄物として。
滲みそうになる涙を止めて,再び作業にとりかかろうとすると自分の部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
「?」
自分以外の人間が家にいるということの方が,過ごしている時間上長い。
もしかしたら空耳だろうか,と疑っていると,再びノック音が響いた。
「キラ,居るだろ?」
呼びかける声が,彼のものだ。
懐かしくキラの耳に響く。 もう何日ぶりだろうか。
「うん。ちょっと待ってね」
紙だらけ,書籍に囲まれた自分の座っている所から腰を上げると,扉の方へと向かう。
ノブを掴んで,部屋をあけた。
「どうかした,アスラン?」
なんとなく,アスランの顔を見れば涙が出てしまうかも,と考えていただけに,普通に話しかけることが出来た自分に驚いた。
「否,これといった用はないんだけど・・・・・・」
そう言ってアスランは言葉を濁す。
それから,覗いたキラの部屋を見て,言った。
「部屋の整理?どうかしたのか?」
どうかしたのか?
それは,キラにとっても問いたい質問だった。
この男は一体何を言っているのだろう。
「まあね」
言葉を濁すと,アスランはそうか,と言った。
「あのさ,キラ。明日空いてる?」
「え・・・あ,仕事は?」
突然の誘いに,キラは戸惑う。
「休みを取ってきたんだ。たまには家でゆっくりしたいからな」
空いている,といえばアスランはどうするのだろう。
外出,だろうか。
そして出先で,何か話しを持ちかけられるのだろうか。
「キラは?大丈夫?」
再び尋ねられて,キラは返事に詰まった。
それでも,そんなに長い時間をかけなかった。
もう,告げられるのなら,それでいい。
別れを告げられても。
思い切って言った。
「うん,大丈夫」
「そっか。良かった。最近ずっとキラと過ごしてなかったからな・・・」
嬉しいそうに目を眇めるアスランを見ていると,まるでまだまだ一緒にいることが出来るような錯覚に陥ってしまう。
そんな自分を叱咤して,キラはアスランに声を掛けた。
「それじゃ,ごめん。片付けに戻っていい?」
「あ・・・,引き止めてごめん」
言うなりキラは自分の部屋の中に戻る。
あっという間に背を向けたキラに,アスランの表情をみることは出来なかった。

寂しそうなアスランの表情を。

















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