大切なこと。

第1話*弱さ






何となく,予感はしていた。
そういう予感がしていた。自分の頭の中で。
それでも,どうにかしようと足掻かなかったのは,それなりに理由があったと思っている。
冷え切った自分の家に足を踏み入れて,アスランはひとつ,息を吐いた。






今日がクリスマスだということは,雰囲気で分かっていた。
社内,そして普段歩いている町中。
どこも,クリスマスカラーを飾り,クリスマス仕様となったものたちを見て,あぁもうクリスマスの時期なんだな,と思った。
恋人になって初めてのクリスマス。
プレゼントを用意して,そしてクリスマスイヴにも家に戻れないことは分かっているのだから,クリスマスこそ一緒に過ごさないとと思っていた。
思っていた,とでは語弊がある。
過ごさないとと思っていた,のではなく,過ごさなければならないような気がしていた,のだ。
きっと何かある,と。キラと,一緒に過ごしておかねば,後から後悔しなくてはならないことになる,と。
八時には会社を出る予定だったのだ。
しかし,出ようとしたその瞬間に一本の電話が入った。
父が倒れた,と。
もちろんそこには選択肢など用意されていなかった。
キラのところに行きたかった。
自分の家に帰りたかった。
しかし,状況がそれを許さなかった。
父より,恋人を優先できないという自分が悔しかったが,それでも駄目だった。
親の言いなりにしかなれない自分。
そうして,恋人を放ったらかした罰が自分に下った。
九時前には家に着く予定であったのに,結局家に着いたのは次の日になっていた。
クリスマスは,終わっていた。
明かりのつかない家に帰ったアスランが一番に感じたのは冷え切った家。
もしかしたら。
そう思ってキラの部屋のノブに手をやる。
予感は的中していた。
部屋の中は見事に空っぽだった。
大型の家財は置いたまま,書類や衣類は全て持ち出されていた。
いつか,キラと話していたことを思い出す。
『整理をしているんだ』
整理,強ち間違ってはいないだろう。
しかし,それは整理でもあり,引越し準備であったのだ。
整理,という言葉に流されてしまった,呑まされてしまった自分が悔しい。












リビングに足を踏み入れる。
真っ暗な中にライトを落とすと,人気のなかった部屋に微かなそれを感じることが出来た。
テーブルの上には,きっとキラの手作りであろう料理が並んでいた。
二人分。
一緒に食べるつもりだったのだろう。
そこには少しの言葉も残されていなかった






















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