大切なこと。 第5話*強い |
義父と入れ違いのようにやってきたのは,半分しか血の繋がりのない弟だった。 「お兄ちゃんっ!!」 駆け寄ってくるのは,まだまだ背が低く,10歳にもならないミハウだった。 くったくのない笑み。 それは,自分の持っていないものを持っている顔。 自分は義父から,一切の愛情など感じたことはなかった。 ミハウには目に入れても痛くないような可愛ぶりだ。 「久しぶりだな。 元気にしてたか?」 頭を撫でてやると,嬉しそうに笑う。 腰辺りに頭をあて,ぎゅっと抱きつく弟の姿はいつもと変わりの無い光景。 そして,そんなミハウを彼の付き人が迎えに来るもの当たり前のことだ。 「ミハウ様,そんなにくっつかれるのはよろしくありません。 お兄様が困りますよ」 「別に俺は構わないさ。 けど,ごめんな,ミハウ。今日はこれから用事があるんだ」 「えー,もう帰っちゃうのー」 アスランは膝を折って,ぐずる声を出す,半分しか血の繋がりの無い弟と,目線を合わせた。 「また今度来るから。今日は我慢してくれ」 本当は用事など何もない。 以前に義父に言われたのだ。 用もなにのにこの家に入り浸るな,と。 要は,ミハウとあまり関わって欲しくないのだろう。 直接言われたわけではないが。 自分の兄がアスランだと分かったのも,ミハウが駄々を捏ねて父に尋ねたからだ。 もしも,ミハウがアスランに興味を示さなければ,アスランが兄だということも教えなかっただろう。 「そんなこと言っても,お兄ちゃん,全然この家にこないよ? いつも用事があるから,って帰っちゃう・・・・・・」 しょぼくれたミハウに,真実を伝えたいと思ったが,そんなことが許される訳がないだろう。 ――-ミハウのお父さんがね,俺に早く帰れって言うんだ・・・・・・ 自分にとばっちりが来るのはまだいい。 が,ミハウまで辛い思いをさせようとは思わない。 自分のような思いをさせたくはないと思う。 「ごめんな」 ともう一度謝ると,名残惜しげに小さな身体が離れていく。 可愛くて,そして憎い弟。 ミハウにじゃあな,と手を振り,付き人に頭を下げるとアスランは振り返らずに家を出た。 この間お見合いをした女性,ビアータ・ユアサからメールが入った。 見合いの席で次回の約束がなされているが,それまでに一度会って話がしたいという。 困ることもないアスランは構わない,と返事を返した。 |
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