大切なこと。

第9話*持っているもの





今,機密機械を試作,という段階で業者にお願いしているのだが,そのメインとなる基盤部分が会社に届いていないという。
いつも無理を聞いてもらっているだけに,目茶なことも出来ない。
メイン基盤を注文している会社の方に連絡すると,事故のために基盤をつくるための部品が届くのが送れまだ出来上がっていないのだという。
こちらも,いつもお馴染みの会社であるし,またいつも誠心誠意な対応とそれに見合う商品を提供してくれている。
やはりこちらもに無茶なことをいうことは出来なかった。
試作品が出来ない,ということは社内コンペに出すことが出来ないということだ。
それは即ち父からも文句もくる,ということになる訳で。
アスランの心境といしては,やはり出来るだけ,この父に文句を言わせたくないと思うのだ。
もんもんと考える時間だけが過ぎていくだけで,案は何も浮かばない。
しかし,それを放っておける時間もない。
机の引き出しを開けて,他の業者にあたれそうな連絡番号を探そうと,アスランは一番手前にあるそれに手をかけた。
―――どこに仕舞ったかな・・・・・・?
がさがさと探っているが,必要とするそれは中々姿を現してくれない。
大量の紙の中に紛れ込んでいるのは確かだろうが,こう大雑把に確かめても出てこないのは必須かもしれない。
そう思い,アスランは一枚一枚プリントを見ていくことに決めた。
これも違う。
これは全然違うな。
これを機にいらないプリントや紙束などは捨ててしまおうと慣れた手つきで廃棄するプリントを破っていく。
そこに出てきたのは,昔に作ったおもちゃの説明書だった。
概製品などではなく,自分のオリジナルでいちから組み立てようとしたのか,説明書というには薄くなった文字と当時のお世辞にも綺麗とは良いがたい字の羅列が続いている。
何を作ろうとしていたのだろう・・・・・・?
丁寧に折られた,古びた紙を広げるとそこには小さな部品を沢山使った機会のおもちゃの作り方が記されていた。
そこには,メイン基盤とは書かれてはいないが,それと似たものを作っている痕跡がある。
もしかしたら・・・・・・。そう思って,アスランは慌てて自分のパソコンを立ち上げた。
沢山のデータを入れているためにファンが動くのが遅く,アスランの苛立ちを煽った。
暫くしてから,急いで指定したページを開ける。
自分の製品と見比べてみると,そこは少しの違いはあったものの自分で作れるような基盤が表示されていた。
―――これなら,今から自分でつくれる!!
何とかなる,そんな兆しを見つけたアスランは自分の席を立ち,急いで自分の家へと向かった。













帰りがてら,自分の家にもないような部品を,既にプリントアウトされた書類とを見比べながら購入。
家に帰るなり,私室にこもり,アスランは得意の機材を手に細かい作業を始めた。
出来上がったのは,それから一時間と少し経ったころである。
それを丁寧に透明の袋に入れ,試作品を作ってくれている会社へと番号を回した。
「すみません,そちらに納入するはずだったメイン基盤のことなんですが」
『ああ,結局どうするんだい?』
「それがですね,自分で作れるようなので作ってみたんです」
『ええ?!アスラン君がかい?』
「ええ,私の得意分野なので。で,今一応作り終えたんですけれど,ちょっと家庭用の機材では無理なところがあるんです。
 それでも良ければ,いま手持ちにひとつしかないんですがお願いしたいんです」
『凄いねぇ,君・・・・・・。基盤があるなら何とかなるだろうよ。じゃあ,それを持ってきてくれるかい?』
「はい,今すぐにそちらに向かいます。本当にすみません。」
『いやいや,楽しみに待っているよ』














出迎えてくれた職人さんの反応はとても良いものだった。
「これならいける。大丈夫だ」
凄いじゃないかと言ってくれる言葉と共に,背中をばんばん叩かれる。
愛嬌のある職人さんだから,アスランには全く不快とならなかった。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
深々と頭を下げると,そんなものは今するもんじゃないと言われた。
「まぁ,そうだけど,勿体無いねぇ。」
しみじみというその言葉の意味を分かりかねて,アスランは尋ねた。
「何,でしょう?」
「何でしょう,じゃないよ。私は君のその才能が勿体無いといいたいんだ。」
「はぁ・・・・・・」
「今してるのは営業かい?何か私にはよく分からんが,それは君には勿体無いと思うよ。
 別にアスラン君の働きが悪い,という訳ではないんだ。
 むしろ,君は他の人間よりも対応がいいと思う。
 しかし,他に今よりも得意分野とするものがあるのならば,そちらを選んだほうがいいんじゃないか,と思うよ。
 君のためにもね。」
慈悲深く,深い表情をしたとても穏やかな顔は,決してアスランを悪く言っているようには見えなかった。
「十分,君なら出来ると思うよ。私はその協力を惜しむつもりは無い」
きみを何年見続けてきたと思っているんだという取引先のトップは,アスランの背中を叩いた。















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