僅かな瞬間 |
生まれて、早一年。 幼いキラを寝かせるのはいつの間にか、父親の仕事となった。 無論、義務感からではない。 自分の愛らしい息子の寝顔が見たいのと、後は罪悪感から。 この父親は、自分が殺したのと同然だと自分に縫い付けてきた。 それを決して、はぎとろうとは思わない。 唯、生まれ変わりのようなキラを今まで以上に愛したいと、そればかり。 出来れば、この気持ちが軽くなると嬉しいのにな・・・と思うことはあった・・・・否、現在もあるが・・・。 「さっ、キラ。寝ようか?」 夜も8時となれば、まだ生まれて1年あまりのキラにとっては眠くなる時間。 決してキラの母親に、否自分の妻にもかけない程の優しく 愛しみのある声と共にキラを抱き上げた。 自分よりも凄く小さく、軽いキラを壊れないように、まるでガラスを扱うかのように。 でも、決してぬくもりを手放さぬように―――――――。 ベビーベットの上に優しくのせれば、もうキラは眠りの底。 眠っているはずなのに、それでも小さな5つの指を父親の人差し指をしっかり掴む。 そんなキラに父親はやさしい笑みを顔に浮かべる。 ・・・うかべた筈だったのに、目が潤んでいた。 「さみしい・・・んだな・・・」 掴まれた指から伝わるキラのオモイ。 さほど大きくない声。 だが、静かに紡がれる言葉は痛々しい言葉となって幼いキラの母親の耳へと飛んでいった。 ―――――――まぶしい。 そう感じて咄嗟に目を閉じた。 少しの間目を閉じていたが、やがてゆっくりと目を開けた。 あけると共に、耳に自分の名を呼ぶ声が聞こえてくる。 それは、よく聞きなれた声色。 しかし、今は決して自分の名を呼ばない。 名前・・・・では――――。 自分の耳を疑うが、その間にも聞こえてくる自分を呼ぶ声。 「 」 疑いが確信と変わるそのコエ。 気がつけばそのコエの主を探していた。 探せば、緑色の自分が送ったロボット鳥のトリィがいる。 だが キラの姿は見当たらない。 しかし、トリィの辺りを探せば、うっすらとキラの姿が・・・。 自分の目にもうっすらとしか写らないキラの体は、目を凝らしてみないと存在さえも分からないという人目に付くとは考えがたい姿。 駆け寄り、思わず抱きしめようとした・・・。 が。 カラだのないキラを抱きしめても、空気を掴むだけで。 その儚さが、アスランの瞳に涙を溜めさせた。 そんなアスランを見て、幻影としか見えないキラはさみしそうに笑う。 「久しぶり・・・・だね?・・・・アスラン・・・・」 「どうしてっ、どうしてあんな真似をっ・・・」 自分の口から出てきた言葉は、益々キラの顔をさみしくさせるだけ。 ―――――――――ちがう。 言いたい事はこんな事じゃない。 「ごめん・・・・」 「っ・・・・、・・・・ラだけだったのに・・・・・。・・・・っ」 瞳に溜まっていた涙が静かに弧を描く。 滅多な事に泣かないアスランの顔を見たキラは顔をくしゃっとゆがめた。 それでも、泣かないキラ。 「本当にごめん・・・・僕には謝るしか出来ないから・・・。でも・・泣かないで・・・」 「違う、違うっ!謝るのは俺のほうだ!キラは悪くないっ」 涙はいくら拭っても溢れてくるばかりで。 「ううん、アスランは悪くない。悪いのは僕。自分に負けてこんな事をしたのだから。自分の弱さに屈した自分への罰だよ」 「違うっ!!追いやったのは俺だっ」 何度も顔をふれば、飛び散る涙がキラのカラダを通り抜ける。 「いつかは・・・これでよかったと思うときがくるから。ね?」 アスランとは違い、落ち着いた声とやさしい笑み。 それが、次第にアスランの乱れた心を落ち着けていく。 しかし、キラの心情は表情と大幅に違っていたのだ。 泣きたいけど泣くなんて許されない。 自分が自分で選んだこと。 だから、泣かない。 「僕はもう、死んでしまったけど君は生きてるんだから・・・。泣かないで・・・」 死ぬという事はもう生きてる人と一緒になれないコト。 僕だって一緒に居たかったなぁ――・・・・・・ そんな事を絶対に打ち明けられないと分かっているのに、密かにココロに留めている自分を自嘲したくなった時、アスランが今までとは打って変わったような声で、キラに尋ねた。 「キラは・・・本当にそれで、良かった、のか・・・・?」 涙をあふれさせていた瞳も今までのような勢いは感じず、ただ静かに涙を頬を伝わせている。 「本当は、俺のこと、嫌・・・だったの、か・・・・?」 その言葉を聞いたキラは、自分が必死になって蓋をしていたオモイを弾けさせた。 「ちがう、違う・・・・嫌いな訳・・・ないよっ!!!」 涙があふれるのが自分でも分かった。 目も熱い。 やっと、自分のオモイを弾けさせたキラ。 なのに・・・・・・・・・・。 ―――――――――――あれっ?カラダが・・・・ 涙を流してしまったキラに待ち受けていたのは、唯でさえ透明で幻影のようなカラダがヒカリの粒に変わっていくモノ。 「あっ、アスランっっ!!」 キラのカラダを見れば、これからどうなるのかが直ぐに2人共分かった。 その恐怖にキラは咄嗟に自分のオモイを吐き出した。 「まだっ、僕は、生きたかったよっ!!」 本当だった。僕は未だ生きていたかった。 受けいられる筈のない言葉を言った自分に返ってきたのは、思いもしない暖かいコトバで。 「なら、俺の所に来いっ!!!」 そんな事を言っている間にもカラダはヒカリに変わっている。 「えっ、いいの?」 「時間がないっっ!!!早くっ!!!」 カラダの殆どがヒカリの粒になっているカラダ。 「ありがとう、本当にありがとう。アス『ラン』」 最後の方のコトバは自分の体から伝わってくる暖かさで・・・・・。 アスランは静かに、その暖かさをココロに留めた。 アスランの頬を伝うものは今はもう、ない。。 変わらない 掛け替えのない思いが ある限り 切なさも思い出に変えられるときが くるから ココロに強い気持ちをくれるから 見失なわないで ダイジな もの 涙の深さより 大切なもの 『キラ』 『何?どうしたのアスラン?』 『何か、キラの声が聞きたくなって・・・・。目の前には小さいキラが居るし、ココロの中には大きなキラがいるしね』 『不安になった?』 『まさか』 『僕はずっと此処にいるよ』 掛け替えのないヒトの 僕を呼ぶ声 遠くても触れ合う 2人の世界 そこからは、きっとあの場所も 見えるのかな? 愛しい声が 聞こえるのかな? 過去は過去として存在する 消えることはないけど 戻らないけど 僕はワスレナイ 1人じゃないこと 泣いた夜もいつの日か あなたと笑いあえるかな? あなたと語りあえるかな? 記憶の1ページ 海ではなくて 空になるように 忘れない 1人じゃないこと この話は、良かったと言ってくれる人と納得いかないという2パターンに大きく分かれます。 非現実的なのはもちろん、はっきりいえば、ひとつの身体に、二つの気持ちが入り込むのは、現実世界ではもちろん、非科学的世界の中でも出来ません。 一つの身体に二つの心、気持ちが入ると、いずれはもうひとつの気持ち(ここではキラにあたる)が暴走する恐れがあるらしいです。 まぁ、言うなれば、器となった人間(ここではアスランにあたる)の人格が失われるといったことでしょうか? なので、こんなことをすれば、キラは元よりアスランも死にます。 今回の話では、アスランはキラに詫びたいという気持ちが大きかったので、まぁそんな事は無視してもいいか・・・なんて、思っています。 とりあえず、この話についての細かい突っ込みはナシにしてやってください! |
| 薄荷キャンディの全ての無断転載を固く禁じます。 All text on this web stie are copyright(C)2007- Peparmintcandy yurikaoru |