Better Helf


第1話*玩弄

目覚めるのは,牡特有のにおいの残る部屋。
その部屋で目覚めるのは,あらわにした姿とは考えもつかない程の幼さ。





キラがこの豪邸に呼ばれたのは,丁度2年前になる。
家族が事故に遭い,たまたま生き残ったのがキラだった。
縋るあてのないキラが引き取られた先は,亡き母が誰よりも親しかった友人の家だった。
しかし。
その彼女も病死。
それを追うようにして,その旦那も死んだ。
今,キラが住まわせてもらっている家には,幼いキラといくつも年の離れた青年の二人が住んでいた。

お金なら,使えきれないほどキラの手元にはある。
しかし,キラが欲しいものはそんなものではないのだ。

学費だけは自分の―――自分の名義になってしまった―――通帳から払っている。





「おはよう,キラ」
心地よいトーンで声を掛けて来たのは,キラよりも九年もの年の差のある青年,アスランだ。
「おはよう,アスラン」
朝の挨拶はその一言で終わる。
濃厚なことばを交わしているのは夜だけであって,それ以外には会話は皆無である。

ふたりは,メイドが用意した朝食を摂るために席についた。
アスランは和食を,キラは齧る程度にフルーツを食べると,席を立った。
そして,アスランは彼の亡き父が創業者である大手の会社に,キラは学校へと各自自家用車で現地まで送られていった。






「キラ,最近女っぽくなったわねぇ」
親友のミリィとは,かれこれ小学部からの付き合いになる。
図星をつくのがうまいミリィに,図星をつつかれると一気にボロを出すキラは,彼女にたったのひとつも隠し事をその名の通り隠し通せたことがない。

「女っぽいって・・・・・・・そんなに今まで僕が女に見えなかったってこと?」
心外というように口を尖らせると,キラは手元にあるオレンジペコーを手に取った。
そんなキラに,そういう意味じゃないとミリィは否定をする。
「キラはねぇ,どこからどう見ても女の子よ。 思わず私だって抱きしめたくなるくらいにね。
 けど,私が言いたいのはそういうことじゃないわよ」
一言置いてから,再びはミリィは話し始めた。
もちろん,喉をうるわすことも忘れない。
「大人の色気が出てきたって子とよ」
「大人の色気・・・・・・・・」
思いもしない言葉に,キラは鸚鵡返しに言葉を返した。
「そうねぇ・・・セックスをしているとか・・・」
まさか,一見可愛く見えても中身は抜けているから・・・と思って軽く振ってみた話題であるのに,キラはびくっと肌をふるわせた。
何気ないセリフだったろうに,しかしキラには普通でいられる訳もなく。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「何,当たりなの?」
早速,キラが俯いたのを見て,ミリィはつつく。
見かねて,ミリィは言葉をかけた。
「別に悪いことだとは思わないわ。・・・・・・・けど,ちゃんとゴムはしてるの?」
「ゴム?・・・・・・・・・・・あぁ,コンドームね・・・・・・・・・・・・・・」
言葉が続かないのは,つまりはノゥを意味している。
流石のミリィも,ひとつ大きなため息をついた。
「ちゃんと生理来てるの?」
少し怒り気味な口調になってしまうのも致し方ないことだといえるだろう。
しかし,今ひとつ抜けているキラには,それさえも通要しなかった。
「あ,うーん・・・・・・・先月は来たよ」
キラの返事を聞いて,少し安心するミリィ。
しかし,今月は未だなのだろうから,油断は出来ない。
何故,キラはこんなにボケボケなのだろうと,胸のうちで再び大きくため息をつくと,ミリィは言った。
「ちゃんとやる時にはゴムをつけてもらわなきゃダメよ,キラ!!」
「う,うん」
ミリィにおされ気味のキラに,彼女の想いが伝わっているのか。
今ひとつの反応に,ミリィは泣きたくなった。
しかし,こんなキラをスキになったのは,自分だ。
こんなことは,今までにもたくさんあったから何とかなると自分を信じさせて,話を続ける。
「相手が嫌って言っても,直ぐに折れちゃダメよ!っていうか,絶対に折れたらダメだからね!」
直ぐに折れるのは,キラの長所でもあり,短所でもある。
しっかりと注意を促してから,二人はカフェテリアを出た。




ベッドに呼ばれ,いつものように衣服を脱がされる。
そのアスランの淡々とした手つきを見て,キラはぼんやりと考えた。

―――一体,どうして,アスランは僕なんかを抱くんだろう・・・・
胸も大きくないし,とりたて都会の女の人のように柔らかい抱き心地があるようにも感じられない。
何の魅力もない自分に,どうしてアスランが性の捌け口として扱っているのか,キラにはどう考えても分からなかった。
しかし,こんな形でも,自分を必要としてくれているということは,キラにとってはとても嬉しいことのひとつだった。
アスランの,キラの体を触る手は,いつも優しく労わってくれている。
普段はそんなことをしてもらえることは一切無かったが,こんな時だけでも優しく扱ってもらえるのは,キラにとってはとても幸せだった。
濃紺の髪も,美しく光るエメラルドの瞳も,薄い唇でさえも愛しいのに,何一つそれは触れることは出来ずに,キラは成されるままだった。
ごく稀に,アスランの欲望を口で咥えて,白濁を飲むこともあったが,そんなのは片手に収まるほど,しかしていない。

と,アスランが自分の蕾に手を触れたときに,ミリィの言葉を思い出した。
言いづらいが,キラはアスランの手を取り,思い切って言った。
「ぁ・・・あの,コンドームをつけてほしんだけど・・・・・・・・」
言い終わってから,恐る恐るアスランの瞳を見ると,いつもより増して冷たい瞳を光らせていた。

ミリィに言われる前から,もちろんキラも学校の授業などでゴムの話を知っていた。
しかし,口に出すのはなんだか躊躇われ,ずるずるとそのままにしてきていた。
なんだか,言ってはならないような話である気がしたからだ。
中ではじけた瞬間,自分の体に子供が出来るかもしれないと,はじめの頃はよく考えていた。
それでも回数を重ねると大丈夫かも,なんていい加減に考えていたが,それは全く反対の方向に進んでいっていたことを,今日は書籍を読んで知った。
回を重ねることに,やはり危なくなる。ミリィの言葉。
もう,おいそれとは置いて置けなくて,キラは思い切って,アスランに告げたのだが。

―――・・・・・・・・
言葉の代わりに瞳が雄弁に語っていた。
「・・・・あぅ,っごめんなさい・・・・・・・いやぁぁっ」
思わず謝ったが,時すでに遅く。
いつもなら,ジェルを塗ってもらえるのだが,今日はその滑りもなく。
引き裂くような痛みが,キラを襲った。
「っいたい・・・・・・・・いやっ・・・・ぁ・・・・・・・・・」
施しのない蕾に,無理やり犯したことを明々白々とする鮮血が,花弁を伝う。
しかし。
回数を重ねてきたキラの体に襲うのは,痛みの次に底のない快楽の海だった。
アスランの欲望の先走り液と,キラの体液で次第に滑りはよくなっていく。
嫌らしい淫靡な音が,部屋に響いた。
「ぁあっ・・・・・んァ・・・・・」

やはり,こんなものなのだろうか,とキラは快楽の中で薄っすらと考えた。
自分はそれくらいの価値しか,アスランにとってはないのだろうか。

こころの中とは裏腹に,襞は,欲望を逃がさぬように必死に追いかける。
勝手に腰が動いた。
「やん・・・・・ああぁ・・・・でちゃ,ぁ・・・・・・・」
アスランの欲望が怒張した途端に,キラは果てた。
その反動でキラの襞は,アスランの欲望を締め付ける形になる。
アスランも堪え切れなかったのか,より深く突いた所で,白濁を放つ。
同時に,キラは体の奥に何か熱いものがかかった感触を感じる。
「いやぁ・・・・・・・・・・・」
小さくことばを漏らし,キラは果てた。
キラの蕾からは,入りきらなかった白濁が,白い太ももを伝っていた。










玩弄ganrou―――なぶりものにすること      岩波書店広辞苑第五版






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