Better Helf


第2話*選ぶ道

部屋の戸をノックされる音で,キラは目覚めた。
「キラさん,朝ですわよ」





起こしに来てくれたのは,長年ここで仕えているミハウだった。

「今日は,雨が降るようなので,傘をお忘れないようにお願いしまうす」
「ありがとう」
ミハウが開けたカーテンからは,雨が降る,と彼女が言うように空は暗く重く見える。
「でも,めずらしいですね」
キラは丁寧にたたまれている征服に袖を通し,ナイトシャツをミハウに渡す。
「何が?」
「アスラン様とお顔もあわせられないなんて・・・・・・。
 今までは,このお部屋にキラさんがおられることさえ少なかったからですからねぇ・・・数える程しかこの部屋を使われることはなかったのに・・・
 何があったのです?」
あまり聞かれたい話ではない。
セックス,しかもゴムの話なんです。
なんて,いくらいつもお世話になっている人であるからって言えるわけがない。
否。普段から自分のこと知られている人であるから,余計にはずかしのだが。
キラは言葉を濁した。
「少し体調が・・・・・・・」
体がしんどいというのは,嘘ではない。
しかし,ここ2週間程キラはアスランと,朝食でさえ共にしていない。
もちろん,アスランの寝室で目覚めるということもなかった。
はじめの頃は,寝室に呼ばれたりもしたが,無視や断わっていると,何もしなくなってきた。
そんな程度だったんだろう。
キラは投げやりにそんなことを思う。
「お体の調子が悪いのなら,しっかり朝食を食べて,寝て,運動をするべきです。
 ・・・・・・そうです。今日は,コックがコーンスープを作っていました。
 今日はそちらをお召し上がって学校に行ってもらいましょう!
 今から食事を用意しますので,今しばらくお待ちくださいね」
そのままキラの部屋から出て行くミハウに慌ててありがとうと声をかけると,ミハウはにっこりと笑った。

やばいよ・・・・・・・

思わずキラは,口に出して言ってしまった。
心の中で,その言葉を反芻する。
しかし,事態がなんら良い方向に進むわけでもなく。
キラの心境では,言わずにはいられなかったのだ。
・・・・・・・・どうしよう・・・・・・
キラは,顔を真っ青にしてミリィの所へ向かった。

「ミリィ,どうしよう!!」
生理が来ない,とトイレから帰ってくるなり,そんな風に言われて,ミリィは思わず本当?!と尋ねてしまった。
キラは力なく頷く。
本当にどうしたらいいのか,さっぱり分からなくて。
頭の中は真っ白だ。
顔色を失ったキラに,ミリィは怒ることも出来なかった。
「もうどれくらい,来てないの?」
「・・・・・・・多分2ヶ月近いと思う・・・・・」
ミリィは冷静に切り出した。
「キラ。どうしようって言ってても分かんないんだからさ,確かめてみようよ」
「確かめる?」
「うん。学校が終わったら一緒に行こう!ね?」

授業が終わるなりふたりが向かった先は薬局だった。
「あぁ,妊娠検査薬かぁ・・・・・・」
聞いたことはあったけれども。
そこまで思いつかなかったなぁとキラはひとりごちた。
「まずは,やっぱり確かめないと」
二人は,キラの家に向かった。

トイレに入ったキラは,結果を見て更に顔色を失った。
―――嘘・・・・・・・
思わず何度も説明書と検査薬を見比べるが,やはり陽性で。
一気に思考回路がストップした。
どうしようどうしようどうしよう・・・・・・・
そればかりが頭の中をぐるぐる回り,落ち着いて考えることも出来ない。
どうしようどうしようどうしよう・・・・・・
そこで,区切りを入れたのは,トイレをノックするミリィの存在だった。
「キラ,どうだったの?」
そこでキラは,一度考えるのは止め,ミリィに結果報告するために自室へと向かった。

「ねぇ,ミリィ。どうしよう・・・・・・」
不安の色をいっぱいに広げたキラの顔をかわいそうなくらい,酷い顔をしている。
何も考えることが出来なくなっているのか,どうしようどうしようとばかり言葉にしていた。
「まずね,キラ。そのお腹の中の子供のことを考えないと。
 どうしよう,ばっかりじゃ前には進まないよ」
そうして,ミリィは話し始めた。
お腹に出来た子供をおろすのか,生むのか。
おろすのなら,早ければ早いほどいい。これはキラの体に負担をかけるから。
それから,もしも生むならば。アスランとしっかり話しをした方がいいと思う。それから,学校。休学かもしくは退学。
「でも,やっぱり一番に考えないといけないことは,キラの年齢からしておろすことだと私は思うよ」
なんせ,キラもミリィもまだ15歳なのだ。
子供を養うにも,お金にゆとりがあったとしてもキラにもそれ相応になっていかないといけない。
「それに,私たちはまだ学生。しかも高等部。まだまだ覚えておきたい知識はいっぱいある。
 でも,これだけは取り違えないで。
 これは,私の案よ。生むか生まないのかは,キラが決めること。
 生むとなっても生まないとしても,私は出来る限りの協力をしたいと思っているから」
不安そうな顔をするキラに,ミリィは力いっぱい笑う。



キラは,自分の選ばなくてはならない選択肢に,悲しそうに笑った。









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