Better Helf


第4話*願い

寒かった冬はやがて春を迎え,暑い夏を連れてきた。






「キラ,お邪魔しますわよ」
玄関先から聞こえてきた声に,キラは重い腰を上げた。
少しばかり歩いたところで,足取りの軽い楽すと顔をあわせる。
「いらっしゃい」
のんびりとキラが声をかけると,ラクスは怒ったように言う。
「何を歩いていられんです?キラはゆっくりしていてくださいな」
「あ,うん,ありがとう」

ピンクの髪をしたラクスは自分の家に帰ってから知り合った女性だ。
目と鼻の先に住んでいる。
キラ同様,ラクスも一人暮らしをしているらしい。
こんな,普通の家では使わないような言葉を使う彼女が,なぜ一人暮らしをしているのか。
明らかになぞが残るのだが,自分だって,まるっきり未成年が妊婦で一人暮らしなんておかしいことこの上ない。
ラクスに尋ねられなくて安心しているし,彼女自身もそんなことを聞くような野蛮な人間でないことをこの数ヶ月でキラは知った。
だから,自分もラクスを見習うように,何も聞かないことをキラは胸に誓っている。

リビングまで,ラクスはキラの重いからだを支えるように歩く。
そのまで大げさにしなくても,といつもキラは断るのだが,ラクスはキラを無視している。
臨月を迎えたキラは,少し歩くことだけでも大変な体力を要している。
そうして,ラクスはソファへ,キラはクッションを上にと座った。
「後・・・・・・二週間ですね。どんなキラの子供なのか,楽しみですわ」
自分のことのように喜んでくれるラクスに,キラは嬉しそうに笑った。




その後,ミリィが食事を作りにキラの家を訪れ,夕食は三人でとることとなった。




ラクスとミリィが帰った後の家は,しんと静まっているように感じられる。
家の大きさがキラひとりではあっていないのだ。
縁側に座り,涼しい風をキラは凪いでいた。

ごめんね,お父さんに会わせてあげられなくて。

ひっそりと,お腹の中にいる自分の子供につぶやく。
申し訳ないと,思う。
これはたまたま書籍で読んだ話なのだが,シングルマザーの子供は並大抵の精神力がなければ社会の縮図である学校は難しい,という。
キラには,ただ謝ることしか出来なかった。

ごめんね。ごめんね。

アスランは今頃どうしているんだろうか。
顔立ちもいいし,社会の立場もある。
きっと結婚くらいしているだろう。 結婚していなくても,彼女がいるはずだ。
キラは時々考える。
もし。
もしも,自分が家を出て行く前にアスランに子供が出来たことを言えばどうなっていただろうか?
暫く考えてみたが。
ゴムの話だけであんなにも怒ったのだから,きっと今回も更に怒るだろう。
あの美しい,瞳で。
そういえば。
ミハウはどうしているだろうか。
こっちに来てからは色々な書類や病院通いやらなにやらで,すっかりと忘れていた。
心配,してくれているのかな・・・・・・
きっとミハウなら,子供のことを喜んでくれていただろう。
あの,優しい笑みを浮かべた彼女をキラは鮮明に思い出すことが出来た。

また,会えるといいね・・・・・

ふと,空を見上げると月が美しい。
雲とそれが趣を出している。

生まれてくる子供には出来るだけ,波風があたりませんように―――

キラは思わず願わずにはいられなかった。








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