Better Helf


第7話*願い

ママ、大好きっ。





それは,やっとシヴァが拙いながらもことばを話すようになってきたことだ。
「どうして家にはパパが居ないの?」
それは,キラにとって苦しむ他ない質問である。
「えっとね・・・・・・」
自分の中で理解していてもいつか,自分の子どもにも話さないといけないこと位,分かっていた。
しかし。
分かっているからといっも,話せないこと位あるのだ。
―――どうすればいい・・・・・・?
冷や汗が背中を伝う。
―――父さんは死んだって言えばいい?
―――どこかに仕事に出かけてるって言えばいい?
―――それとも,父さんはいないんだって言えばいい?

だめだ。

ちゃんと話さないといけないこと位分かっている。
真実を話さないといけない,と。
―――君の父さんはあなたが生まれてくることを望まなかったんだ・・・
こんなことを自分のわが子に言ってもいいのだろうか?
髪は似ていないものの,瞳の色はあのひとの美しいエメラルドをそのままうつしたかのようであるし,この年でこんなに物分りがいいのかと思うような,アスランの聡明さと賢さも引き継いでいる。
こんなにも色濃く影を残しているのに。
もしも真実を口にすることで,シヴァが傷ついたら?

言えないよ・・・・・・

聡明さと賢さのためか,シヴァにはあまり言い訳が通用しない。
言っても,それって嘘でしょと簡単に見抜いてしまうから,いい加減なことは口に出来ない。
それに,今回のことをいい加減に話したくはないのだれど・・・。
大きな瞳をくりくりさせて尋ねてくるシヴァに,キラはなんと答えようか頭を悩ます。
真実を伝えるべきか,それとも・・・・・・?



「ママ?」
質問の答えが返ってこないことにシヴァは首を傾げる。
そこで覗いた瞳に,何だか瞳がいつものようにしっかりと自分を見据えていないことに気が付いた。
慌てたように「何?」と聞いてくれるが,いつもと何か違うような気がするのだ。
悲しそうな。
答えが見つからないのだろうか?
自分の母にとって,難しい,答えるのが困難なことなのだろうか?
しかし,いくら賢い頭を持っているシヴァといえどたかが生まれて四年経った子どもに伝える手段はなくて。
どうにか母に,いつも通りに笑っていて欲しいと必死に考える。
あちこちを見渡し,何かないかと思って探すと,あることをシヴァは思い出した。
「ねぇ,ママ。あのね,お祭り行きたいっ!」
今日の幼学校の帰り,母と歩いた道に張り紙がしてあったような気がするのだ。
なんのお祭りなのか,はっきりと見ることは出来なかったが,きっとお祭りに行ったら,母のその表情も明るくなるのではないかと。
それは,シヴァなりの,キラへの愛情表現でもあった。
「お祭り・・・・・・?あぁ,今セントラルでやっているお祭り?行こうか」
「うんっ!!」
悲しそうなのが,少しさっきよりもマシになったかな?
そう尋ねることは出来はしないが,シヴァはこころの中でこっそりと願う。
母がいつまでも笑顔でいれるように,と。
泣きそうな表情で笑う自分の母を見ていたら,急に抱きしめられた。
「ごめんね・・・・ごめんね・・・・」
そう苦しそうに言う。
「本当にごめんね・・・・シヴァは何も悪くないのにね・・・・・ごめん・・・・・」
ぎゅっと抱きしめながら,母は泣き出してしまった。
どうしてママが泣いているのだろうか?
尋ねたいのは山々だったが,そういうような雰囲気ではない。
一体どうして自分の母が泣き出すのは分からなかったが,きつく抱きしめられすぎて体が痛いのは本当だ。
「痛いよ,ママ」
声を漏らすと,ごめんねと再び謝りながら体を抱きしめる力を弱めてくれた。
「本当にごめんね・・・・・・」
訳が分からないまま,シヴァは願う。
―――お祭りに行った後,ママがしあわせそうに笑えますように・・・・・・












薄荷キャンディの全ての無断転載を固く禁じます。
All text on this web stie are copyright(C)2007- Peparmintcandy yurikaoru